̶大学としては新モデル・コア・カリキュラムに対応しながら、独自の教育にも取り組むのですね。内山 その通りで、新モデル・コア・カリキュラムの中でも重視しているのが、プロフェッショナリズムです。プロフェッショナリズムとは、医師が社会から期待される価値観や能力、行動、態度などを示します。社会に対して貢献するためには、患者さんとのスムーズなコミュニケーション、チーム医療をリードする能力、医師としての道徳性などが欠かせません。これらを身につけたうえで、患者さんに対して心を込めて接し続けられる医療人、これこそが高度医療人材の基礎になると思います。大野 薬学部でも対人能力が重視されるようになっており、新モデル・コア・カリキュラムでは臨床能力のスキルアップが訴求されています。医師をはじめとする多職種と協働しながら臨床で能力を発揮できる薬剤師を育てるため、臨床薬学教育の強化に学部全体で取り組んでいます。具体的には6年間を通じて臨床現場や施設訪問などを通じて、患者さんと触れる機会を増やします。本学は医学部と看護学部を含む3学部の医療系総合大学であり、大学病院も備えています。この充実した学びの環境を活かし、本学だからこそ実現できる薬学実践教育を目指しています。赤澤 看護学部では選抜制で保健師と助産師の実習があります。そのため、4年間の教育期間ですが、時間に限りがありますが、それでも看護師教育については基礎固めを徹底しています。今後の日本の状況を踏まえると地域医療提供体制の構築は必須であり、在宅医療の要となる看護師への教育が重視されるようになっています。その結果2022年度からは1年生の段階から地域・在宅実習が始められるようになりました。病院だけでなく幅広く地域で役立つ看護師となるためには、多くの内容を学ぶ必要があります。̶高度医療人材育成のために大学院はどのような役割を果たすのでしょうか。内山 高度医療人材といえば、まさに大学院がその育成の場です。まず医療分野の研究に必要な基本的知識や研究規範について学ぶ「統合講義」が設けられています。大学院博士課程には5つのコースがあります。すなわち生命科学研究、予防・社会医学研究、高度医療人養成、再生医療研究、先端医学研究で、各コースに分かれて高度医療人材を育成します。修士課程には医療科学コースとSDGs/SDHコースが設けられていて、さまざまな人材を幅広く受け入れています。大野 大学院では社会人大学院生の受け入れを強化し、専門学会の認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得をサポートしています。これも高度医療人材の育成に関する取り組みです。高度な先端研究の推進を通じて大学院教育の̶新モデル・コア・カリキュラムに基づく学部教育を基盤として、高度医療人材の育成に取り組まれるのですか。内山 学部生の教育については、卒業時にディプロマ・ポリシーを達成できるようカリキュラム・ポリシーを決めており、まずは立派な医療人の育成を目指します。そのうえで大学院が、高度医療人材を育成するための教育の場となります。大学院では社会人入学制度も導入していて、多くの大学院生が病院などに勤務しながら学位取得を目指します。OMPU大野 医師の働き方改革に伴い、薬学部でも医師の片腕を担える薬剤師を育成する必要があります。新モデル・コア・カリキュラムでは、薬物治療を個別最適化する能力や、医療DXなど情報・科学技術を活用する能力が求められており、学部低学年から臨床を視野に入れた教育を推進する予定です。新たな教育はすでに大学を卒業した薬剤師に対しても必要であり、そのための受け皿として機能するのが、2022年に薬剤師認定制度認証機構(CPC)より「認定薬剤師認証研修機関」として認証された薬学生涯学習センターです。センターでは社会が求める多様なニーズに応えるために、リスキリングやリカレント教育を通じて、知識・技能・態度を総合的にスキルアップできる研修プログラムを提供しています。 赤澤 看護学の新モデル・コア・カリキュラムについても、医学の10項目を参考にしながら見直しが進められています。看護師の働く場はかなり幅広いので、まずベースとなる能力を学部教育でしっかりと固める必要があります。一方では国の施策として在宅シフトが進められており、病院だけでなく地域でも働ける人材育成が求められています。さらに先端医学についての知識も必要となるなど、看護師の学びには幅広さに加えて深さも求められています。これらのニーズに対応するため大学院では修士課程の高度実践コースにおいて、高度医療人材としての専門看護師の育成を行っています。また2022年に設立された看護キャリアサポートセンターでは、地域社会に貢献できる看護人材のリカレント教育と看護職のキャリア支援を行い、地域の看護師のレベルアップに努めています。5大学院では高度医療人材の育成に力を入れる 特 集
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