大阪医科薬科大学学報 6号
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OMPU今回の訪問先― 福森先生が取り組まれているアルツハイマー病関連の研究内容を教えてください。 アルツハイマー病とは、加齢に伴って記憶や思考能力が少しずつ障害されていき、認知機能が失われていく病気です。その原因はまだ明らかではありません。ただ一因として考えられているのが、アミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質の脳内での蓄積による、神経細胞の傷害です。 私が研究テーマとしてきたのが、アミロイドβの生成プロセスに関わるγ(ガ高齢化が進む日本では、認知症患者の増加が社会的な問題となっています。認知症になる人の6割から7割程度が、アルツハイマー病を患っている方です。こうした状況を改善するため、2023年9月にアルツハイマー病の新薬が承認されました。これは決定的な治療薬ではないものの、研究に弾みがつくのは間違いありません。薬学部薬物治療学Ⅱ研究室の福森亮雄教授は、アルツハイマー病を引き起こす病原物質の研究に長年取り組み、新たな病態・診断・治療法の開発を視野に入れて研究を続けています。ンマ)セクレターゼと呼ばれる酵素です。γセクレターゼが脳内でアミロイドβタンパクをつくり出していて、アルツハイマー病の発症の原因となっている。ここまではわかっているのですが、どうやってつくり出しているのかの詳細が明らかになっていません。この生成メカニズムを解明できれば、脳内でのアミロイドβの生成をうまく食い止められる可能性があります。 アルツハイマー病の新薬として承認されたレカネマブには、脳内にできたアミロイドβを取り除く機能があります。とはいえ完璧にではなく一部ですから、軽度の認知症の進行を抑える効果は期待されていますが、アルツハイマー病の完治につながるものではありません。― つまりレカネマブは作られたアミロイドβに対してあくまでも対症療法的というわけですね。これに対して、先生の研究が進んでアミロイドβをそもそもつくられないようにすれば、それは根治療法となりそうです。 アミロイドβはタンパク質の一種であり、前駆体と呼ばれる元になる物質からつく31研究室訪問薬学部アルツハイマー病の謎に迫る病気を発症するまでの20年間に、脳内で何が起きているのか薬物治療学Ⅱ研究室教授 福森 亮雄

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