大阪医科薬科大学学報 6号
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音楽はどこでもできる家の近くの散歩コーススコットランドの知り合いの土地でキャンプ自給自足の生活とは2人でロードトリップスポーツはコミュニケーションツールの1つOsaka Medical and Pharmaceutical University医学部を2022年に卒業した清水玲央奈さんは、現在はイギリスのLondon School of Hygiene and Tropical Medicine で Tropical Medicine & International Health の修士課程で勉強しています。この度 “留学”について、ロンドンからメッセージをいただきましたので、ご紹介します。海外留学コラム前編様々な理由で留学をされる方がおられると思います。例えば、異国の地で生活してみたい、外国語を学んでみたい、ここの大学で学びたいなど。今回は私がどういった経緯で研修医をせずに英国に留学することになったかを少し紹介しようと思います。Mark Twain という作家がとても心に響く言葉を残しています。"The two most important days in your life are the day you are born and the day you find out why."私はこの言葉に出会うまで様々な経験をしました。アメリカに始まり、ベトナムのニャチャンという街からロシア系コミュニティをたどり途中でバイク事故に遭ったり、インドネシアの山岳ガイドの5畳ほどの家で6人家族で住んでいるお宅で数日過ごしたり、南アフリカのソウェトというスラム街を訪ねてみたり、インドネシアの火山に登ったり。あるいは西医体で優勝したり、クラブで遊んだり、アルバイトをしたり、バンドをしたり、合コンに行ったり、留年したりと。しかしどれだけ様々な経験をしても、私は満たされることが無く、どこまで行っても心は虚空でした。そしてある時その言葉と出会いました、そして自分がしていることは薬物中毒の人と何も変わらないということに気づいたのです。ただ表現系が異なるだけで、「足りない」という感覚は似ているものではないかと思いました。そこからは「足るを知る」という言葉の通り、自分という人間が存在しているということに感謝し、今その瞬間に感謝し、自分という人間が何なのかをとことん追求しました。なぜ自分が海外に旅行に行くのか、それは本当に海外の文化を知りたいのか、それともアドレナリンをただただ求めているだけなのか。なぜスポーツをすることが好きなのか、なぜ音楽が好きなのか。一人で自分と向き合う時間はとても長かったですが、その最終的な答えが世のために生きるということでした。自分のために生きるということには際限が無く、自分の性には合っていないということに気がついたのです。究極的には、世のために生きるということが自分のために生きることにつながるのですが、自分の性格や興味の持っていることをどのようにして世の中に役立てることができるのかということを探している最中に出会った学問が「国際保健」という学問でした。生まれて初めてこの学問を学びたいと思いました。それからいくつかの大学院に願書を送り、現在の大学院とご縁があり、勉学に励んでいる次第です。自分と「留学」という概念を矢印で結んだ際に、客観的にみた行為は「留学」という枠組みに入るかもしれませんが、ベクトルの向きの違いで自分に返ってくる経験というのは大きく異なります。私は留学を求めたのではなく、結果として「留学」という言葉が当てはまったという方が正しいのかもしれません。人それぞれ生き方があり、そこが人の面白い特徴の1つです。自分に合った生き方に誇りを持って進んでいける人生を見つけることが大切なのかなと思います。(後編に続く)28留学とは

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