大阪医科薬科大学学報 5号
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別館・歴史資料館小児科学教室同門の久野友子先生(故人)のご遺族から、本学に多額の寄付をいただきました。生前、本学小児科血液グループのリーダーとして、また、主要連携病院の小児科部長として自らの知識、技量、時間すべてを患者に捧げ、診療にあたる診療姿勢は、まさに理想の医師像と呼べるものでした。医師を志す後輩が先生のような理想の医師を目指し精進するよう、本学の現役教員として今後とも教育、指導に努めて参ります。久野先生とご遺族に改めて御礼申し上げます。小児科学教室 教授芦田 明名誉教授藤本守先生は、研究、教育、人材育成のすべての分野に全力投球で、その先生のお仕事を、陰から支え続けてこられたのが房子先生です。仏教の曼荼羅の世界に例えるなら、守先生は不動明王であり、房子先生は文殊菩薩ではないかと思います。両先生は、久野寧先生の「医道とは弱者への無限の愛である」という言葉が書かれたプレートを玄関先に置かれ、ご夫婦でその道を歩まれ、守先生亡き後も房子先生はその道を歩まれております。久野友子先生は、小児がんの診療と研究を通して、子どもが病後の未来を生きる手助けをされました。一方で、限られた命を生きる子どもと出会い、医療の限界を知り苦悩されることもありました。そうして、病気や障害の有無にかかわらず、子どもと親の<からだ><心><暮らし>と<未来>への配慮を忘れない医療を実践すべく、親子クジラを掲げた医院を開業されました。たくさんの地域の子どもと出会う幸せ、<昔の子ども>が人生の節目ごとに会いに来てくれる喜びとともに、困難な状況にある人を思い、苦しい時も笑顔を絶やさない人でした。本基金が、友子先生のように<心ある医療を実践する人>を育てる礎になりますよう、心より祈念いたします。名誉教授 窪田 隆裕小児科 非常勤医師金 泰子(1984年入局)生理学教室の先々代教授である藤本守先生から、本学に多額の寄付をいただきました。生前お会いする機会があった際、学問に対する情熱や本学に対する愛情が窺われるお話ぶりが印象的だったのが思い出されます。退任後も常に本学のことを気にかけてくださっていたのだと思います。ご寄付の重みと同時に、本学の伝統を守り伝えていく現役の教職員や学生の責任を改めて感じます。藤本先生とご遺族に改めてお礼申し上げます。久野先生は、人として、医師として、多くの方から尊敬されていました。彼女の訃報を知り、非常に多くの方々が弔問に訪れ、その中には患者さんや患者さんの親御さんをはじめ、幼少時に医療をうけ成人された方々、遠方からお別れに来られる姿もありました。さらには、久野先生を偲び、さまざまな感謝や思い出のお手紙が数多く届けられました。これらを拝見し、久野先生が、如何に患者さんやご家族に寄り添い、「至誠仁術」を実践されていたかを強く感じています。今回、奨学金という形で久野先生の「魂」が多くの学生に伝承され、良医を育む「力」となることを確信しています。生理学教室 教授 小野 富三人医療安全推進室 室長新田 雅彦くじらのロゴには「く」「の」があしらわれています。Osaka Medical and Pharmaceutical University44established 2023established 2022久野友子奨学基金本基金は、故久野友子先生(学41期)のご母堂様から寄せられた寄付金により設置されました。久野友子先生は、生前、病気と闘う子どもたちやそのご家族と真摯に向き合い、誠意をもって寄り添い、小児がんの医療・研究に全力で取り組み、毎年、ご自身のお誕生月には、「子どもホスピス」や「がんの子どもを守る会」への支援を続けられるなど、様々な形で病気と闘う多くの子どもたちを見守ってこられました。笑顔が素敵で心温かく、誠実なお人柄から患者さん達にとても慕われ、多くの方が治療を終えても交流を続けておられました。このたびのご寄付は、久野友子先生が「ご自身のできるすべて」を形にされ残してこられた想いを医師を志す学生に繋げてもらいたいと、ご遺族からご寄付をいただきました。本基金は、ご遺族のご厚志に込められた想いに寄り添い、久野友子先生のご遺志を伝え繋げていく奨学基金として、恒久的に受け継いでまいります。尚、久野友子先生は、2021年5月、出勤途中に事故に遭いご逝去されました。ご家族はとても深い悲しみの中、クリニックに通われている患者さんの対応を最優先にあたられました。歴史資料館藤本守・房子運営基金本基金は、ヴォーリズの建築物に深い造詣をお持ちで、学内で唯一現存する歴史資料館をこよなく愛された故藤本守元学長のご遺志に基づき、御令室 藤本房子様から寄せられた寄付金によって設置されました。藤本元学長ご夫妻の想いに添いながら、歴史資料館の健全な運営と維持を図ってまいります。久野 友子先生 KUNO Tomoko1992年、大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)卒業、学41期生。同大学小児科学教室非常勤医師主要連携病院の小児科部長を務め、2011年大阪市内にて「くの小児科クリニック」開院。日本小児科学会認定小児科専門医。2021年5月ご逝去。藤本 守先生 FUJIMOTO Mamoru1955年、京都府立医科大学卒業後、同大学助手、講師、岐阜大学助教授を経て大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)教授に就任、同大学図書館長、学長を務められた。日本生理学会常任幹事、日本腎臓学会理事なども歴任。2017年12月ご逝去。藤本 房子先生 FUJIMOTO Fusako1995年、京都府立医科大学卒業後、同大学眼科学助手を経て、近江八幡市立八幡病院(現近江八幡市立総合医療センター)、公立学校共済組合東海中央病院、近畿中央病院を始めとして、淀川キリスト教病院、みどりヶ丘病院(高槻市)に勤務。現在は、高槻市に在住。

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