大阪医科薬科大学学報 4号
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今回の訪問先― 中野先生が取り組まれている微生物超微形態学とは、どのような学問でしょうか。 細菌やウイルスの形態・構造と機能の間には、一定の関係性があります。従って、超微形態と呼ばれる極めて微細なウイルスの形態を精緻に観察できれば、その機能解析を経てさまざまな疾患の原因解明につなげられます。このように形態から機能を解析するのが微生物超微形態学です。本学では1960年にいち早く電子顕微鏡を導入し、その後も技術の進歩に伴って、新たな電子顕微高精度な電子顕微鏡に加えて、安全にウイルス研究をできるハイレベルな実験室。本学ならではの設備を使いこなした、新型コロナウイルスの感染対策研究が進められています。医学部 微生物学・感染制御学教室の中野隆史教授らのチームは、中国・武漢由来の新型コロナウイルス株をいちはやく入手・培養し、電子顕微鏡で観察しました。その結果、抗菌効果や抗ウイルス効果の知られていた酸化亜鉛が、新型コロナウイルスに対しても有効であると確認し、さらなる研究を進めています。鏡を相次いで導入してきました。現在使用している機器は、わずか0.2nm(ナノメートル=10億分の1メートル)の物体を見極められる分解能を備えているため、大きさが数十nm程度あるウイルスなら十分に観察可能です。私たちは、この電子顕微鏡を新型コロナウイルスの研究に活用しています。 高精度な電子顕微鏡を扱うには、検体の扱いなどに特殊な技術が必要となるため、日本でも設置している研究室が限られています。そこで新型コロナウイルスの発生を契機として、さまざまな研究室から共同研究の申し出をいただいています。― 特殊な3D画像も製作できると聞きました。 その通りで、私たちのチームが作成した新型コロナウイルスの3D画像は、専門誌『Medical Molecular Morphology』の表紙に使われました。 画像作成プロセスでは、まずウイルスをごく薄い切片に切る特殊な技術が必要です。そのうえでCTスキャンと同じ要領で、切片を角度にして約1度ずつ回27OMPU研究室訪問医学部ウイルスの形態観察ミクロの世界の知見を新型コロナ対策に活かす微生物学・感染制御学教室教授 中野 隆史

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