大阪医科薬科大学学報 3号
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病院長 南 敏明Osaka Medical and Pharmaceutical University8当院は以前から北摂地域における地域医療の要の役割を果たしてきました。今回の新本館A棟の完成に伴い従来から続けてきた高度な先端医療を、今後はより一層進化させて地域の患者さんとそのご家族に安らぎを提供する病院を目指します。当院は「特定機能病院」に指定されています。すなわち、まず高度な医療を提供し、高度医療技術を開発すると同時に、高度医療に関する研修を行うなどいくつもの厳しい要件を満たしていると国から承認された病院です。難病患者さんに当院でしか受けられない治療を行うと同時に、大学病院として最先端の研究にも数多く取り組んでいます。また「地域がん診療連携拠点病院」でもあり、がん診療に関する最先端の体制が整えられています。一方では高齢者に多い循環器系の疾病について負担の少ない治療を重視し、大動脈弁狭窄症の患者さんに対してはTAVI(経カテーテル大動脈弁治療)を積極的に行っています。TAVIは体への負担が少なく、早期回復を期待できるだけでなく、死亡や脳梗塞リスクも軽減する治療法です。超高齢社会に対処するため、当院では多くの高齢者を苦しめる二大疾患のがんと心疾患の治療に力を入れています。2021年度、当院は年間12,471例の手術を行いました。1カ月あたり約1,000件のペースであり「24時間、手術を断らない」をモットーに、いつでも緊急手術を行える体制を整えています。手術を円滑に行うためには執刀にあたる医師はもとより看護師、麻酔科医、臨床工学技士から薬剤師までが一丸となって動く必要があります。どんな手術に対しても即応できるチームが常に待機し、同時にいつでも手術室を用意しておけるよう院内システムを整えています。新本館A棟の1階には大阪府三島救命救急センターの閉院に伴い三次救急機能が移転されました。今後は二次救急では対応できない重篤な患者さんや特殊疾病患者さんも受け入れ、より高度な救命救急医療を提供します。三次救急は医療機関の中でも最もレベルの高い救急医療を提供する、文字通り「最後の砦」です。2020年初めから日本が見舞われたコロナ禍でも当院は的確に対応してきました。第1波の際に三島二次医療圏内でコロナ対応できたのは当院だけでした。当初は病棟を1棟まるごと軽症と中等症対応の病床とし、重症者にはICUをゾーニングして対応しました。続く第2波からは重症患者だけを診る体制に転換、その後最も危機的状況だったのは第4波です。このときにはICUを可能な限りコロナ対応に振り向けながら、それでも3分の1は緊急のホットラインで搬送される患者さん用に死守して対応しました。三島医療圏の最後の砦として、心疾患や脳卒中の患者さんへの緊急対応は絶対に欠かせないと判断したからです。2021年8月末からはコロナに感染した妊婦さんの受け入れを始めました。大学病院でなければ対応できない超緊急の帝王切開を行う一方で、コロナ妊婦専用の分娩室を急きょ設置し、可能な限り自然分娩できる体制を整えました。当院ではいち早く2015年に手術支援ロボット「ダ•ヴィンチ」を導入しました。従来の腹腔鏡下手術と比べてもさらに体への負担が少なく、安全性の高い手術治療の実績を積み重ね、2021年には2台目の「ダ•ヴィンチ」を追加しています。ダ•ヴィンチシミュレーターを使った医学部生向けの研修会や、研究医・レジデントに対する勉強会なども行っています。コロナ禍での対応はもとより、私たちは常にその時点で必要な医療を迅速に提供する体制を整えてきました。いつも機動的に動ける理由は「患者さんに最適な医療を提供するために、いま自分は何をすべきか」と全スタッフが自問自答した上でミーティングを行い、意思統一を徹底しているからです。私たちはこれからも、患者さんに寄り添いながらより先進的な医療を提供するため尽力していきます。これら一連の取り組みが評価され「日本医療機能評価機構 病院機能評価 3rdG」では最高ランクに位置づけられ、米「Newsweek」誌では2021年、2022年と続けて「World's Best Hospitals」に選出されています。大学病院としての強みを活かす地域医療最後の砦を守る最新設備を導入し最善を尽くす先進的な設備を駆使してハイレベルな医療を提供

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