大阪医科薬科大学学報 3号
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漢方薬は紀元前から中国で使われ始め、後に日本に伝えられました。長い経験に裏付けられた効能は極めて貴重であり、未来に伝えなければなりません。そのために必要なのが、現代のサイエンスに基づく薬効の解明であり、同時に材料となる薬草を栽培する技術の確立です。2つのテーマに取り組む臨床漢方薬学研究室の芝野真喜雄教授に、研究の現状と今後の課題などについてお話を伺いました。今回の訪問先― 臨床漢方薬学とは、どのような学問でしょうか。 漢方薬は、2000年以上もの時間をかけた臨床経験の蓄積により、体系化されてきた薬です。その効果と安全性は経験知として認められています。ただ現代医学で使われている薬とは、基本的な考え方が異なります。効能は確かですが、医療現場で医師が使うためには、なぜ効くのか、どのようなメカニズムに基づいているのかなどを解明する必要があります。したがって漢方薬の効能を、最先端のサイエンスに基づいて解き明かすのが、私たちの研究テーマです。これほど長い期間使い続けられてきた薬は他にはなく、人類の財産とも呼ぶべき存在です。超高齢社会の日本では、漢方薬活用は患者さんのQOL向上の面からも期待がかかります。そんな漢方薬をより使いやすく発展させ、未来に伝えていくのも私たちの使命だと心得ています。― 漢方薬の考え方は、西洋医学の薬とはかなり異なりますね。 現代医学の薬は基本的に、一分子一標的として開発されるため単一の成分によって構成されています。これに対して漢方薬では、一つの薬に数多くの成分を含みます。たとえば葛根湯は7種類の生薬からつくられますが、1種類の生薬だけで数百種類もの成分が含まれています。つまり葛根湯には数千の成分が含まれているのです。この中のどの成分が、どのように作用しているのか、薬が効く仕組みを解明してエビデンスを固める。これが私たちに与えられた課題です。臨床現場で安心して使ってもらうには、現代医学に準拠したエビデンスが必要であり、さらに副作用の問題にも目39OMPU研究室訪問薬学部漢方薬を未来へ。先人たちの知恵に磨きをかけ、次の世代に引き継ぐ臨床漢方薬学研究室教授 芝野 真喜雄

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