大阪医科薬科大学学報 3号
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救急医学教室 教授Osaka Medical and Pharmaceutical University10らすべてを受け入れられるのが、私たちの特長です。高齢化の進行に伴い救急医療の重要性は必ず高まっていきます。高槻市では既に65歳以上人口が29%に達していて、高齢者比率は今後も高まる一方です。医療の高度化や多様化が進んだ結果、90歳を超えた患者さんが救急搬送されてくるケースもあり、こうした高齢者は多様な病態を抱えている場合も多いため対応には慎重さが求められます。救急医学はまさに社会の動きの最前線に位置しているため、常にルールを見直すなど、変化し続ける環境に柔軟に対応しながらの活動が求められます。 専門医によるチーム医療三次救命救急とは、直ちに適切な処置を施さないと命に関わる状態での医療を意味します。1階には直ちに緊急手術を実施できるよう蘇生室を2つ用意しました。救命救急では1人の患者さんに医師が最低でも3名、看護師を合わせると5~8名のチームで対応します。そのためそれだけの人数が動けるスペースを確保しています。運ばれてきた患者さんに対しては、複数の医師が分担して頭から足の先までを同時に診ていき、必要な処置と手順をその場で即決して実施します。一連のプロセスはすべて録画され、事後に検証を行ってチームとしてのスキルアップを図るシステムを整えています。切迫した状況での対応を求められるため、担当できるのはベテランの医師に限られます。こうした状況をよりリアルに学べるよう研修医や学生には動画を見ながらのレビューを実施しています。三次救命救急は常に重症度と緊急性を考えた判断を行いながら、チーム医療による多職種連携が実行される現場です。緊迫感あふれる状況を擬似的に体験できるのはとても有意義な学びになります。センターは2022年7月に立ち上がったばかりですが、コロナ第7波の影響もあり病院全体の救急搬送数が通常の3倍近くにまで増えています。母数の増加に伴い救命救急ホットラインへの連絡も増えていて、立ち上がりの1カ月だけで120件ほどありました。 最後の砦としての役割を果たすコロナ対応について当院では、当初の第1波から第6波まで常に重症患者を可能な限り受け入れてきました。これまでの受入実績はトータルで260例を超えています。現実問題として一般救急を受け入れながらのコロナ対応は、決して容易な作業ではありません。とはいえ三島医療圏で私たちが担っている役割を考えれば、どちらも受け入れる責任があります。今後について二次と三次の中間病態までを含めると年間の対応数は1,500件から多ければ2,000件ぐらいまでになるでしょう。私たち独自のシステムとして、高槻市の事業であるドクターカーも運用しています。ドクターカーとは医師が現場まで同乗し、より早く治療を開始するための仕組みです。少しでも早い段階で治療を施して救命率や社会復帰率の向上を目指します。ドクターカーに対応する医師は24時間体制で待機し、呼び出しには直ちに出動できるよう準備しています。大変ではありますが、そこまでの対応をできるからこそ名実ともに三島医療圏での最後の砦になりうると考えています。「救急の日」の9月9日、令和4年度の救急功労者表彰として、高須朗救命救急センター長(救急医学教室 教授)が、寺田稔総務大臣より表彰状を授与されました。大阪医科薬科大学病院は、これまで救急医療や災害医療に対する取り組みを行ってきましたが、2022年7月1日に三次救急を担う救命救急センターを設置して、三島医療圏の最後の砦となるべく、24時間迅速な患者さんの受け入れに努めております。今後もさらに救急搬送の効率化を図り、三島医療圏の救急医療体制の充実と発展に努めてまいります。高須朗 救命救急センター長総務大臣表彰受賞

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